微分の重要な公式をまとめました。
三角関数の微分公式を証明するとき、導関数の定義から導こうとすると、\(\displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x}\)の極限値が必要になります。
この極限を証明するとき、通常は図を描いて、面積または曲線の長さの不等式を視覚的に立て、はさみうちの原理から証明しますが、もう少し数学的にやりたいものです。
当記事では、三角関数の導関数を曲線の長さの定義から数学的に求めました。
また、合成関数の微分や逆関数の微分の証明については、誤魔化すことなく丁寧に説明しました。
まずはここから
定数関数の微分や関数の和または差の微分、積の微分、商の微分です。
\(c\)を定数、\(f, g\)を関数とする。
\[
c’=0 \tag1
\]
\[
(cf(x))’ = c f'(x) \tag2
\]
\[
\begin{align} &
(f(x) \pm g(x))’=f'(x) \pm g'(x) && (複合同順) \tag3
\end{align}
\]
\[
(f(x)g(x))’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x) \tag4
\]
\[
\begin{align}&
\left( \frac{f(x)}{g(x)} \right)’ = \frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{g(x)^2} && (g(x) \neq 0) \tag5
\end{align}
\]
(1)の証明
\[
c’=\lim_{h \to 0} \frac{c-c}{h} = 0
\]
(2)の証明
\[
\begin{align}
(cf(x))’ &= \lim_{h \to 0} \frac{cf(x+h) -cf(x)}{h} \\
&= c\ \cdot \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) -f(x)}{h} \\
&= cf'(x)
\end{align}
\]
(3)の証明
\[
\begin{align}
(f(x) \pm g(x))’ &= \lim_{h \to 0} \frac{(f'(x+h) \pm g'(x+h)) -(f'(x) \pm g'(x))}{h} \\
&= \lim_{h \to 0} \left( \frac{f(x+h) -f(x)}{h} \pm \frac{g(x+h) -g(x)}{h} \right) \\
&= f'(x) \pm g'(x)
\end{align}
\]
(4)の証明
\[
\begin{align}
(f(x)g(x))’ &= \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)g(x+h) -f(x)g(x)}{h} \\
&= \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)g(x+h) -f(x)g(x+h) -f(x)g(x) + f(x)g(x+h)}{h} \\
&= \lim_{h \to 0} \frac{g(x+h)(f(x+h) -f(x)) + f(x)(g(x+h) -g(x))}{h} \\
&= \lim_{h \to 0} g(x+h) \cdot \frac{f(x+h) -f(x)}{h} + \lim_{h \to 0} f(x) \cdot \frac{g(x+h) -g(x)}{h} \\
&= f'(x)g(x)+f(x)g'(x)
\end{align}
\]
(5)の証明
\[
\begin{align}
\left( \frac{f(x)}{g(x)} \right)’ &= \lim_{h \to 0} \frac{\displaystyle \frac{f(x+h)}{g(x+h)} -\frac{f(x)}{g(x)}}{h} \\
&= \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)g(x)-f(x)g(x+h)}{hg(x)g(x+h)} \\
&= \lim_{h \to 0} \frac{g(x)(f(x+h)-f(x))-f(x)(g(x+h)-g(x))}{hg(x)g(x+h)} \\
&= \lim_{h \to 0} \frac{g(x)}{g(x)g(x+h)} \cdot \frac{f(x+h) -f(x)}{h} -\lim_{h \to 0} \frac{f(x)}{g(x)g(x+h)} \cdot \frac{g(x+h) -g(x)}{h} \\
&= \frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{g(x)^2} \\
\end{align}
\]
関数\(g\)は\(x\)で微分可能で、\(u = g(x)\)として、関数\(f\)は\(g(x)\)で微分可能とし、合成関数\(f(g(x))\)が存在するなら、
\[
\frac{df}{dx} = \frac{df}{du} \frac{du}{dx} \tag6
\]
(6)式の証明
まず、次の補題を証明する。
関数\(f\)が\(x_0\)で微分可能であるには、\(x_0\)で連続なある関数\(\alpha (x)\)が存在し、次式を満たすことが必要十分である。
\[
f(x) = f(x_0) +\alpha (x) (x-x_0)
\]
(i) 関数\(f\)が\(x_0\)で微分可能であるとき、次のような関数\(\alpha (x)\)を定義する。
\[
\alpha (x) =
\begin{cases}
\displaystyle \frac{f(x)-f(x_0)}{x-x_0} && (x \neq x_0)\\
f'(x_0) && (x=x_0)
\end{cases}
\]
このとき、\(\alpha\)は\(f(x) = f(x_0) +\alpha (x) (x-x_0)\)を満たす。
また、
\[
\lim_{x \to x_0} \alpha (x) = \lim_{x \to x_0} \frac{f(x)-f(x_0)}{x-x_0} = f'(x) = \alpha(x_0)
\]
したがって、\(\alpha\)は連続である。
よって、関数\(f\)が\(x_0\)で微分可能ならば、\(x_0\)で連続なある関数\(\alpha(x)\)が存在し、\(\alpha\)は\(f(x) = f(x_0) +\alpha (x) (x-x_0)\)を満たす。
(ii)\(x_0\)で連続なある関数\(\alpha(x)\)が存在し、\(\alpha\)は\(f(x) = f(x_0) +\alpha (x) (x-x_0)\)を満たすとき、
\[
\lim_{x \to x_0} \frac{f(x)-f(x_0)}{x-x_0} = \lim_{x \to x_0} \alpha(x) = \alpha(x_0)
\]
したがって、\(\displaystyle \lim_{x \to x_0} \frac{f(x)-f(x_0)}{x-x_0}\)の極限値が存在するため、\(f\)は\(x_0\)で微分可能である。
以上より、補題は示された。
また、ここで示したように\(\alpha(x_0)=f'(x_0)\)であることを次の証明で使います。
さて、合成関数の微分公式を証明します。
関数\(g\)は\(x_0\)で微分可能で、\(u = g(x), u_0=g(x_0)\)として、合成関数\(f(u)\)が存在し、関数\(f\)は\(u\)で微分可能なら、補題より、
\[
g(x) = g(x_0) +\alpha (x) (x-x_0)
\]
\[
f(u) = f(u_0) +\beta (u) (u-u_0)
\]
を満たす連続関数\(\alpha(x), \beta(u)\)が存在する。このとき、
\[
\begin{align}
f(g(x))
&= f(g(x_0)) +\beta (g(x)) (g(x) -g(x_0)) \\
&= f(g(x_0)) +\beta (g(x)) \alpha (x) (x-x_0) \\
\end{align}
\]
いま、\(\beta\)は\(g(x_0)\)で連続、\(g\)は\(x_0\)で微分可能だったから、\(\displaystyle \lim_{x \to x_0} g(x) = g(x_0)\) (微分可能ならば連続)であるため、\(\beta\)は\(x_0\)で連続である、すなわち\(\displaystyle \lim_{x \to x_0} \beta (u) = \beta(u_0)\)(証明はこちら)。したがって、\(x_0\)で連続な関数\(\alpha, \beta \)の積も連続である(証明はこちら)。
よって、補題より\(f(g(x))\)は\(x_0\)で微分可能であり、その値は
\[
\begin{align}
\left. \frac{d}{dx} f(g(x)) \right|_{x=x_0} = \lim_{x \to x_0} \frac{f(g(x))-f(g(x_0))}{x-x_0} &= \lim_{x \to x_0} \beta(u)\alpha(x) \\
&= \beta(u_0)\alpha(x_0) \\
&= f'(u_0) g'(x_0) = f'(g(x_0)) g'(x_0)
\end{align}
\]
\(x\)を\(x_0\)と置き換えて、書き方を変えると、
\[
(f(g(x)))’ = f'(g(x))g'(x)
\]
\[
\frac{df}{dx} = \frac{df}{du} \frac{du}{dx}
\]
関数\(y=f(x)\)が微分可能で、その逆関数\(x=f^{-1}(y)\)が存在するなら、逆関数も微分可能で、
\[
\frac{dy}{dx} = \frac{1}{\displaystyle \frac{dx}{dy}} \tag7
\]
(7)式の証明
\(f(a)=b\)とする。
\[
\begin{align}
\lim_{y \to b} \frac{f^{-1}(y)-f^{-1}(b)}{y-b} &= \lim_{y \to b} \frac{x-a}{f(x)-f(a)}\\
&= \lim_{y \to b} \frac{1}{\displaystyle \frac{f(x)-f(a)}{x-a} }
\end{align}
\]
ここで、\(y \to b\)で\(x \to a\)なので、\(\displaystyle \lim_{y \to b}\)を\(\displaystyle \lim_{x \to a}\)に変えてしまってもいいのではないか、と考えられます。
実際、そのようにしてもよく、これについては別の記事の定理1で紹介していますので、是非ご覧ください。
よって、
\[
\lim_{y \to b} \frac{1}{\displaystyle \frac{f(x)-f(a)}{x-a} } = \frac{1}{f'(a)}
\]
以上より、
\[
\left. \frac{df^{-1}(y)}{dy} \right |_{y=b} = \frac{1}{\displaystyle \left. \frac{df(x)}{dx} \right|_{x=a}}
\]
\[
\frac{dx}{dy} = \frac{1}{\displaystyle \frac{dy}{dx}}
\]
\[
\frac{dy}{dx} = \frac{1}{\displaystyle \frac{dx}{dy}}
\]
べき関数の微分
\(x^n\)の形、いわゆるべき関数の微分です。
\[
\begin{align}
\left( x^n \right)’ = nx^{n-1} && (nは実数) \tag8
\end{align}
\]
(8)の証明
\(n\)が正整数\((n=1, 2, \cdots)\)の場合、
\[
\begin{align}
\frac{d}{dx}x^n &= \lim_{h \to 0} \frac{(x+h)^n-x^n}{h} \\
& = \lim_{h \to 0} \frac{x^n \left\{ \left( 1+ \displaystyle\frac{h}{x} \right)^n – 1 \right\}}{h} \\
& = \lim_{h \to 0} \frac{x^{n-1} \left\{ \left( 1+ \displaystyle\frac{h}{x} \right)^n – 1 \right\}}{ \left( 1+ \displaystyle\frac{h}{x} \right) -1} \tag{等比数列の和} \\
& = \lim_{h \to 0} \sum_{k=1}^n x^{n-1} \left( 1+ \displaystyle\frac{h}{x} \right)^{k-1} \\
& = \sum_{k=1}^n x^{n-1} \\
& = nx^{n-1}
\end{align}
\]
\((x+h)^n\)を展開して解く方法が一般的かと思いますが、ここでは等比数列の和の公式を使って証明してみました。
また、\( \left( x^0 \right)’ =0\)より、上式は\(n=0\)のときも成立する。さらに、(5)式より、\(m=1,2,\cdots \)として、
\[
\begin{align}
\frac{d}{dx}x^{-m} &= \frac{d}{dx} \frac{1}{x^m} \\
&= \frac{mx^{m-1}}{x^{2m}} \\
&= (-m)x^{(-m)-1}
\end{align}
\]
したがって、\(n\)は整数でも成り立つ。加えて、整数\(p, q\)を用いて、(6)式より、
\[
\begin{align}
\frac{d}{dx}x^{\frac{q}{p}} &= \frac{d}{dx} (x^p)^{\frac{1}{q}} \\
& = \frac{1}{q} (x^p)^{\frac{1}{q}-1} \cdot px^{p-1} \\
& = \frac{q}{p}x^{\frac{q}{p}-1}
\end{align}
\]
よって、\(n\)が有理数でも成り立つ。
\(n\)が無理数の場合は、\(x^n=e^{n \log x}\)と定義するなら(詳しくはこちら)、(6)式と後述する(12)式を用いて、
\[
\begin{align}
\frac{d}{dx}x^n &= \frac{d}{dx} e^{n \log x} \\
& = e^{n \log x} \cdot \frac{n}{x}\\
& = x^n \cdot \frac{n}{x}\\
& = nx^{n-1} \\
\end{align}
\]
幾何学を使わない三角関数の微分の証明
\[
(\sin x)’ = \cos x \tag9
\]
\[
(\cos x)’ = -\sin x \tag{10}
\]
(9)(10)の証明
三角関数の微分公式を証明するとき、導関数の定義から導こうとすると、\(\displaystyle \lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x}\)の極限値が必要になります。
この極限を証明するとき、通常は図を描いて、面積または曲線の長さの不等式を視覚的に立て、はさみうちの原理から証明しますが、もう少し数学的にやりたいものです。
半円\(x=\sqrt{1-y^2}\)について、原点をOとし、点A\((1, 0)\)から点P\((\sqrt{1-p^2}, p)\)に沿った曲線の長さを求める。ただし、\(p>0\)である。いま、線分OAと線分OPのなす角を弧度法で一般角\(\theta\)とすると、\(p=\sin \theta, \sqrt{1-p^2}=\cos \theta \)である。
また、弧度の定義より、曲線の長さは\(\theta\)に等しい。
曲線の長さの定義より、
\[
\theta = \int_0^p \sqrt{1+\left( \frac{dx}{dy} \right)^2} dy = \int_0^p\frac{1}{\sqrt{1-y^2}} dy
\]
微分積分学の基本定理より、
\[
\frac{d\theta}{dp} = \frac{d}{dp} \int_0^p \frac{1}{\sqrt{1-y^2}} dy =\frac{1}{\sqrt{1-p^2}}
\]
ここで、\(\displaystyle\theta=\int_0^p\frac{1}{\sqrt{1-y^2}} dy\)は\(p\)について単調増加関数であるから、逆関数が存在し(詳しくはこちらで紹介した逆関数の連続性の証明をご覧ください)、
\[
\frac{dp}{d\theta} = \sqrt{1-p^2} = \cos\theta
\]
ところで、\(p= \sin \theta\)だったから、
\[
\frac{d}{d\theta}\sin \theta = \cos \theta
\]
また、
\[
\frac{d}{d\theta} \cos\theta =\frac{d}{d\theta} \sqrt{1-p^2} = -\frac{p}{\sqrt{1-p^2}}\frac{dp}{d\theta} = -\sin \theta
\]
以上、正弦と余弦の導関数を導きました。
なお、正弦の導関数から、
\[
\lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} = \lim_{x \to 0}\frac{\sin (0+x) -\sin0}{x} = \cos 0 = 1
\]
自然対数に関する微分公式
\[
\begin{align}
(\ln |x|)’ = \frac{1}{x} && (x \neq 0) \tag{11}
\end{align}
\]
\[
(e^x)’ = e^x \tag{12}
\]
\[
\begin{align}
(a^x)’=a^x \ln a && (a > 0)\tag{13}
\end{align}
\]
\[
\begin{align}
(\log_a |x|)’ = \frac{1}{x \ln a} && (x \neq 0) \tag{14}
\end{align}
\]
以下の証明では、対数を\(\displaystyle \ln x = \int_1^x \frac{1}{t}dt\)と定義する流儀に従って証明します(詳しくはこちら)。
対数の定義はいろいろとありますが、この定義では積分が用いられているので、微分積分学を勉強する際には何かと都合が良いのです。
(11)式の証明
微分積分学の基本定理より、
\[
\begin{align}
\displaystyle \ln x = \frac{d}{dx}\int_1^x \frac{1}{t}dt = \frac{1}{x} && (x>0)
\end{align}
\]
\[
\begin{align}
\ln (-x) = \frac{1}{-x} \cdot (-1)= \frac {1}{x} && (x<0)
\end{align}
\]
これらをまとめて
\[\ln |x| = \frac{1}{x}\]
(12)式の証明
\(y=e^x\)とすると、\(y\)には逆関数が存在し、\(x = \ln y\)。
\[
\frac{dy}{dx} = \frac{1}{\frac{dx}{dy}} = y = e^x
\]
(13)式の証明
\[
\begin{align}
(a^x)’ &= {\left( e^{x \ln a} \right)}’ \\
&= e^{x \ln a} \cdot \ln a \\
&= a^x \ln a
\end{align}
\]
(14)式の証明
\[
\begin{align}
(\log_a |x|)’ &= \frac{\ln |x|}{\ln a} \\
&= \frac{1}{x \ln a}
\end{align}
\]