モリブデンブルー法とは?原理や中間体の構造について紹介!

モリブデンブルー法を用いたリン酸イオンの定量は、学生実験でしばしば取り組まれます。

ある大学の学生実験では、コーラに含まれるリン酸イオンをモリブデンブルー法で定量する実験をしていると聞いたことがあります。

本記事では、モリブデンブルー法の原理や中間体、レポートを作成する際に役立ちそうな参考文献などについて解説します。

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モリブデンブルー法の概略(反応、中間体、測定法)

リン酸イオンの定量方法に、モリブデンブルー法という方法があります。

リン酸イオンは強酸溶液中で、モリブデン酸と反応してモリブデンイエロー(リンモリブデン酸、PMA)H3PO4(MoO3)12と呼ばれる黄色の錯体を形成します。

PO43− + 12MoO42−+ 27H+ → H3PO4(MoO3)12 + 12H2O

図1. モリブデンイエローの構造

上の図1に示したのがモリブデンイエローの構造です。中央にあるのがリン酸イオンPO43−で、その周りに12個のモリブデン酸MoO3が取り囲んでいます。

また、モリブデンイエローのようなオキソ酸の縮合体はポリ酸(ポリオキソメタレート, polyoxometalate)と呼ばれます。

ポリ酸は多様な構造が見つかっていますが、モリブデンイエローはその中でもkeggin(ケギン)型の構造をとることが知られています。

次に、このモリブデンイエローを還元剤で還元すると、青色のモリブデンブルー(PMB)H4PMo(Ⅵ)8Mo(Ⅴ)4O40が生成します。

H3PMo(Ⅵ)12O40 + Reductant → H4PMo(Ⅵ)8Mo(Ⅴ)4O40

ここで、括弧に記されたローマ数字は酸化数を表しています。

反応物におけるモリブデンの酸化数はすべて+6ですが、生成物のほうは一部が+5に変わっており、このことから、上記の反応が還元反応であることがわかります。

このようにして青色に発色した溶液の紫外可視吸収スペクトルを計測し、既知濃度のリン酸溶液を用いて検量線を作成、Lambert-Beerの法則から試料中のリン酸濃度を求めるのが一般的です。

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モリブデンブルー法の一般論

この反応は1783年にScheeleによって言及されましたが、その発見は広くBerzelius(1826)によるものとされています。

モリブデンブルーは単一の種を指すのではなく、還元モリブデン酸化合物の総称で、リンなどのヘテロ原子を含んでいてもいなくても、どちらでも構いません。

また、モリブデンブルー法は一般にオルトリン酸の分光学的測定に用いますが、ケイ酸塩、ヒ酸塩、ゲルマン酸塩の分光光度測定にも使用できます。

オルトリン酸塩(PO43−)は、XO4型の他の四面体アニオンと同様に、Xがヘテロ原子である組成[Xn+Mo12O40](8−n)−のイオンを形成することが知られています。

また、オルトリン酸の場合は、先ほど紹介した通り、これはモリブデンイエローとして知られています。

さらに、オルトリン酸塩の定量はpH 0−1で行うのが最適であることもよく知られています。

これは単に、経験則としてこのpH領域で最も強く呈色することが知られているだけで、モリブデン酸塩の化学的な観点から説明されていません。

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参考文献

他にも、還元体の構造や吸収帯に関することなど、様々なことが研究されていますが、よくわかっていないことが多くあります。

以下の参考文献ではそれらについて詳しく記載されています。

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