指数・対数関数を自然対数から定義する

高校では、対数関数は指数関数の逆関数として定義します。

ここでは、まず自然対数を定義し、そこから一般の対数関数と指数関数を定義する流儀を紹介します。

こちらの流儀は、自然対数の微分や指数が無理数である場合の解釈が理解しやすい点で有用です。

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自然対数とは

自然対数の定義

\(f(x)=x^3\)の不定積分\(F(x)\)を求めてみましょう。

微分したら\(x^3\)になるような関数を探せばよいわけです。積分定数を\(C\)として、\(F(x)=\frac{1}{4}x^4 + C\)とすればよいでしょう。

一般に、次の式が成り立つことは容易にわかると思います。

\[
\begin{align}&
\int x^n dx = \frac{1}{n+1} x^{n+1} + C && (nは1を除く整数) \tag1
\end{align}
\]

問題は\(n= -1\)のときです。(1)式は\(n= -1\)の場合は使えません。

\(\displaystyle \frac{1}{x}\)の原始関数、思いつきますか?おそらくなかなか思いつきませんよね。

そこで、次のような関数を定義します。

定義1: 自然対数

\[
\begin{align}&
\ln x := \int_1^x \frac{1}{t} dt && (x>0) \tag2
\end{align}
\]

なる関数\(\ln\)を自然対数という

すなわち、\(\displaystyle y=\frac{1}{t}\)の\(t=1\)から\(t=x\)までの面積を\(\ln x\)とするということです。

微分積分学の基本定理より、

\[
\frac{d}{dx} \ln x =\frac{1}{x} \tag3
\]

このようにして、\(\displaystyle \frac{1}{x}\)の原始関数のひとつを定義することができました。

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自然対数の性質

定理: 自然対数の性質

\(a>0, b>0\)を実数、\(r\)を有理数とすると、

\[
\ln ab = \ln a + \ln b \tag4
\]

\[
\ln a^r = r \ln a \tag5
\]

\[
\ln \frac{a}{b} = \ln a \ {-} \ln b \tag6
\]

(4)式の証明

\(x\)を変数として、

\[
\begin{align}
\frac{d}{dx}\ln ax &= \frac{1}{ax} \cdot a \\
&= \frac{1}{x} = \frac{d}{dx}\ln x
\end{align}
\]

したがって、別の記事で紹介した系6より、

\[
\ln ax = \ln x + C
\]

\(x=1\)とすれば、\(\ln 1 = 0\)より、

\[
\ln a = C
\]

以上より、

\[
\ln ab = \ln a + \ln b
\]

(5)式の証明

\(x\)を変数として、

\[
\begin{align}
\frac{d}{dx}\ln x^r &= \frac{1}{x^r} \cdot rx^{r-1} \\
&= \frac{r}{x} =\frac{d}{dx} r \ln x
\end{align}
\]

したがって、別の記事で紹介した系6より、

\[
\ln x^r = r\ln x + C
\]

\(x=1\)とすれば、\(\ln 1 = 0\)より、

\[
0 = C
\]

以上より、

\[
\ln x^r = r \ln x
\]

(6)式の証明

(4), (5)式の証明より、

\[
\begin{align}
\ln \frac{a}{b} &= \ln a + \ln \frac{1}{b} \\
& = \ln a \ {-} \ln b
\end{align}
\]

高校数学では指数の性質から証明していたものが、微分を使って証明されました。

また、\(\ln x = 1\)となるような\(x\)をネイピア数と呼び、\(e\)と書くことにします。

定義2: ネイピア数

\[
\ln e := 1 \tag7
\]

\(e\)は無理数で、その値は\(e=2.71828 \cdots \)です。

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指数関数の定義

自然対数の逆関数

(1)式は、\(t=1\)から\(t=x\)までの面積を表しているのでした。したがって、\(x\)が増加するにつれて\(\ln x\)も増加します。

つまり、\(\ln\)は単調増加関数です。単調な関数は逆関数をもつので(詳しくはこちら、逆関数が連続であることの証明を参照されたい)、それを\(\exp\)としましょう。

定義3: 自然対数の逆関数

\(x = \ln y \ (y>0)\)の逆関数を次のように定義する。

\[
\begin{align}
y = \exp x && (y>0) \tag8
\end{align}
\]

定理3: 自然対数の逆関数とネイピア数

\(r\)を有理数として、

\[
\exp r = e^r \tag9
\]

(9)式の証明

\(y=e^r\)とすれば、

\[
x = \ln e^r = r \ln e = r
\Longleftrightarrow y = e^r = \exp(x) = \exp(r)
\]

expの正体は、\(e\)を底とする指数関数だったのです。

言い換えれば、\(1/x\)の原始関数は\(e\)を底とする指数関数の逆関数であると、晴れてわかったわけです。

定理4: ネイピア数を底とする指数関数の性質

\(x, y\)を実数とすると、

\[
e^{x+y}=e^xe^y \tag{10}
\]

(10)式の証明

\(X=e^x, Y=e^y\)とすると、

\[
x + y = \ln X + \ln Y =\ln XY
\Longleftrightarrow e^{x+y} = XY = e^xe^y
\]

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指数が無理数乗の場合

\( \exp(\ln x) = x\)なので、\(a>0\)を実数、\(r\)を有理数として、

\[
a^r = e^{\ln a^r} = e^{r \ln a} \tag {11}
\]

さて、指数が有理数である場合の解釈は高校数学までで習いますが、指数が無理数の場合はどうしましょう。

ここでは、(11)式を用いて、指数が無理数の場合まで拡張しましょう。

定義4 : 指数が実数の場合

\(a>0, x\)を実数として、

\[
a^x = e^{x \ln a} \tag {12}
\]

このように定義すれば、\(a^x\)は、\(y=1/t\)の\(t=1\)から\(t=x \ln a \)までの面積(定積分)として理解できます。

定理5: 指数関数の性質

\(a>0, x, y\)を実数として、

\[
a^{x + y} = a^x a^y \tag{13}
\]

\[
{(a^x)}^y=a^{xy} \tag{14}
\]

(13)式の証明

\[
a^{x+y} = e^{(x+y) \ln a} = e^{x\ln a +y \ln a} = e^{x \ln a} e^{y \ln a} = a^xa^y
\]

(14)式の証明

\[
(a^x)^y = e^{y \ln a^x} = e^{xy \ln a} = a^{xy}
\]

なお、\(a^x = e^{x \ln a} \Longleftrightarrow \ln a^x = x \ln a\)を用いた。

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対数関数の定義

ネイピア数を底とする指数関数を利用して一般の指数関数を定義したので、これにも逆関数が存在します。

定義5: 指数関数の逆関数

\(a, y\)を実数とする。ただし、\(a>0\)かつ\(a \neq 1\)である。

\(x=a^y\)とすると、逆関数が存在して、

\[
y = \log_a x \tag{15}
\]

とし、これを底を\(a\)とする対数という。

ここは高校数学と何ら変わりありません。

\(a \neq 1\)としなければならないことに注意してください。こうしないと逆関数が存在しません。\(x = 1^y\)とし、\(x=1\)とすると\(y\)は実数すべてを返してしまうからです。

なお、定義5で\(a=e\)とすれば、\(\log_e = \ln\)となり、これを自然対数というのでした。このことから、ネイピア数\(e\)は自然対数の底とも呼ばれます。

定理6: 底を任意の実数とする対数関数の性質

\(a>0\)を実数として、\( a \neq 0\)のとき、

\[
\log_a x + \log_a y = \log_a xy \tag{16}
\]

\[
a^{\log_a b} = b \tag{17}
\]

\[
\log_a {x^y} = y \log_a x\tag{18}
\]

(16)式の証明

\(X = \log_a x, Y = \log_a y\)とすると、

\[
xy = a^Xa^X = a^{X+Y} \Longleftrightarrow \log_a xy = X+Y = \log_a x + \log_a y
\]

(17)式の証明

\[
X = \log_a b \Longleftrightarrow a^X = a^{\log_a b} = b
\]

(18)式の証明

\(X = \log_a x \)とおくと、

\[
x^y = \left (a^X \right ) ^y = a^{Xy} \Longleftrightarrow \log_a {x^y} = yX = y \log_a x
\]

定理6: 底の変換公式

\(a, c>0\)を実数として、\(a, c\neq 1\)のとき、

\[
\log_a b = \frac{\log_c b}{\log_c a} \tag{19}
\]

(19)式の証明

(17)式より、

\[
a^{\log_a b} = c^{\log_c b} \Longleftrightarrow \log_c a^{\log_a b} = \log_a b \cdot \log_c a = \log_c b
\]

ここで、\(a \neq 1\)より、\( \log_c a \neq 0\)だから、両辺を\( \log_c a \)で割って、

\[
\log_a b = \frac{\log_c b}{\log_c a}
\]

このようにして、まず自然対数を定義し、次に指数関数と対数関数を定義することができました。

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指数・対数関数の微分

最後に、指数関数、対数関数の導関数を導いて終わりにしましょう。

指数関数・対数関数の微分公式

\[
\begin{align}
(a^x)’=a^x \ln a \tag{20}
\end{align}
\]

\[
\begin{align}
(\log_a |x|)’ = \frac{1}{x \ln a} && (x \neq 0)\tag{21}
\end{align}
\]

(20)式の証明

\[
\begin{align}
(a^x)’ &= {\left( e^{x \ln a} \right)}’ \\
&= e^{x \ln a} \cdot \ln a \\
&= a^x \ln a
\end{align}
\]

(21)式の証明

\[
\begin{align}
(\log_a |x|)’ &= \frac{\ln x}{\ln a} \\
&= \frac{1}{x \ln a}
\end{align}
\]