エネルギーの意味を基礎から解説

エネルギーとは何でしょうか?

言葉自体は馴染みがあるかもしれませんが、説明するとなると難しいものです。

エネルギー問題や環境問題が懸念されているからこそ、エネルギーとは何かを知っておきたいものです。

当記事では、エネルギーとは何かについて、詳しく説明します。

広告

エネルギーは仕事ができる能力を表す

エネルギーとは、系がある状態で有する、仕事がどの程度できるかを表す指標です。

つまり、エネルギーを理解するには、仕事について知る必要があります。

仕事については高校の物理で学習したかもしれませんが、微積分を使わずに教わったはずです。実は、仕事の厳密な定義は積分で表現されます。

なお、以降では簡単のために一次元での運動を考えます。

定義1: 仕事の定義

力\(F(x)\)によって系が\(a\)から\(b\)まで動かされたとき、仕事\(W\)は次のように定義されます。

\[
W=\int_a^b F(x)dx
\]

特に、\(F\)が位置によらず一定の時、\(W=F(b-a)\)となります。このように表現されれば、高校以降で物理を学んでいない方も見覚えがあると思います。

広告

エネルギーの例: 運動エネルギー

さて、ここで速度と加速度についても見直しましょう。

定義2: 速度と加速度の定義

速度\(v\)と加速度\(a\)は、系の位置\(x\)と時間\(t\)を用いて次のように定義される。

\[
v:=\frac{dx}{dt}
\]

\[
a:=\frac{d^2x}{dt^2}=\frac{dv}{dt}
\]

ここで、\(x\)は\(t\)で一階・二階微分できることを仮定しています。

これを踏まえて、運動方程式を記述すると、

\[
m\frac{dv}{dt}=F
\]

両辺に\(\displaystyle v=\frac{dx}{dt}\)をかけて、\(t=t_1\)から\(t=t_2\)で積分すると、

\[
\int_{t_1}^{t_2}mv\frac{dv}{dt}dt = \int_{t_1}^{t_2}F\frac{dx}{dt} dt
\]

置換積分の公式より、

\[
m\int_{v_1}^{v_2} v dv = \int_{x_1}^{x_2}F dx
\]

右辺は仕事の定義そのものなので、

\[
W = m\int_{v_1}^{v_2}vdv = \frac{1}{2} {mv_2}^2 – \frac{1}{2} {mv_1}^2
\]

このようにして、\(1/2mv^2\)を運動エネルギーと定義します。

定義3: 運動エネルギーの定義

系の質量が\(m\)、速度\(v\)であるとき、この系の運動エネルギーは

\[
\frac{1}{2}mv^2
\]

と定義される。

広告

この式の面白いところは、\(\displaystyle \frac{1}{2}mv^2\)の変化量が仕事に対応しているというところです。

すなわち、2つの状態における性質を見るだけで、その2つの状態を移動した過程でどれだけの仕事が系になされたかがわかるということです。

また、これは仕事がエネルギーに変換したと解釈することもできます。

例えば、始状態での運動エネルギーが100、終状態の運動エネルギーが150とすると、運動の過程でなされた\(150-100=50\)の仕事が運動エネルギーに変換された、あるいは蓄えられたと解釈できます。

逆に、運動エネルギーを仕事に変換することもできます。

例えば、運動エネルギー200をもつ系1が別の系2にぶつかり、系1の運動エネルギーが150に下がるケースを考えます。系2は衝突されることで加速するため、系1から系2に力が働くことになります。

ここで、作用反作用の法則より、系1と系2には、向きは異なるが同じ大きさの力がそれぞれにかかります。系1には\(150-200=-50\)に対応する力が働きます。

また、系同士が衝突して離れるまでは同じ向きに同じ距離だけ進むので、系1は系2に対して50だけ仕事します。

そして、最終的には系2の運動エネルギーが50だけ増えることになります。

以上より、系1の運動エネルギー50が系2に対しての仕事に変わったことがわかりました。

このように、運動エネルギーは仕事を行うことができる潜在的な能力を表しているということができます。つまり、上述したエネルギーの定義に一致します。

なお、運動エネルギーの他にもエネルギーは存在します。例えば、高校物理では重力や静電気力による位置エネルギーを習いました。これらも同様にして何らかの工夫によって仕事に変換することができます。

広告

エネルギーについてわからないこと

最後に、エネルギーについてわからないことを紹介します。授業では分かっていることばかり教えられるきらいがありますが、実際は分からないことの方が多いというのが科学の世界での常識です。分かっていることだけ説明されても、かえって本質がつかめないことがあります。

なぜエネルギーという概念が存在するのか、なぜエネルギーと仕事が変換可能なのかといったことは分かっていません。

なぜそういうことが起こるかについては、先ほどの解説では一切説明できていません。

というより、私はそれを説明できませんし、誰もできません。どれだけ優秀な科学者でも(今のところ)無理です。

世界で起きている自然現象を私たちがエネルギーや仕事という概念で認識しているだけなのです。

余談ですが、私は内部エネルギーがなぜ状態量なのかが理解できず、長らく悩んでいました。その頃の私は、状態量と微積分が関係あるということを知り、馴染みのない数学を学んだ時期もありました。ですが、結局私の疑問は解決されずにいました。

しかし、大学院生になって、それが経験的に知られているに過ぎないことを知り、拍子抜けしました。

必死になって調べたあの時間は何だったのか…とならないように、最後にエネルギーについてわからないことを記しました。